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幸せになるためには

フランクル心理学「幸せになるためには」のアイキャッチ画像

 「幸せ」になるためには、「幸せ」そのものを求めるのではなく、「幸せになる理由」をつくることに力をそそぐ。「幸せ」は何かをした行動の結果として感じるもの。

 この世界で努力を重ね、行動することで「幸せになる理由」が生まれ、人は「幸せ」を感じられるようになる。

 心理学者フランクルは、「幸せそのもの」を追求すると、幸せが逃げていく「幸福のパラドックス」を主張した。

 フランクルの教えをおさえながら「幸せになるためにはどう考えればよいのか」を解説する。

幸せになる考え方

 私たちは幸せになるために生まれてきました。

 幸せになることを、願いながら生きています。心が健康であれば「不幸になりたい」なんて思っている人は、まずいないですね。

 「社員を幸福する」「顧客の幸せを創造する」

 会社の経営理念でも、「幸せ」「幸福」の入った言葉をよくみかけるようになりました。

 「幸せ」がどのような状態であるかを具体的にイメージしていれば、それは実現すべきビジョンであり目標となります。

 でも、個人レベルで「幸せ」を考える時には、「ビジョン」「課題」と出てくると、なんだかそぐわない感じがします。

 あなたにとって「あ〜幸せだな〜」と幸せを感じるのは、どんな時でしょうか。

  • 大好きな人とデートをして、手をつないで街を歩いている時。
  • 仕事で成功をおさめ、カラカラに乾いた喉にビールを流し込む時。
  • 夜遅く家に帰って、スヤスヤ眠る子どもの寝顔を見た時。

 そんな時、人は「幸せ」を感じ満ち足りた気分になります。もちろん、もっといろいろな「幸せのかたち」があり、何に幸せを感じるのかは、人それぞれですね。

 それぞれですけど、共通しているのは、「幸せ」を感じるのには、「理由」があることです。

 「理由」があって、その結果として「幸せだな〜」という「幸福感」がもたらされます。

 先ほどの例でいえば、「恋人がいること」「仕事が成功したこと」「家族をつくり子どもがいること」、それが幸せの「理由」です。

幸せそのものは目標にならない。

 幸せは、理由があって、その結果として「もたらされるもの」「感じるもの」です。

 つまり、幸せをそのものは「目標」にならないということです。

 フランクルは、著『宿命を超えて、自己を超えて』(春秋社)の中で、こう書いています。

 人間が欲しているのは、幸福になる理由です。理由がありさえするなら、幸福は向こうからやってきます。ところが、幸福になる理由を求めずに、幸福そのものを求めるなら、幸福になれません。幸福は遠ざかっていきます。

『宿命を超えて、自己を超えて』(V・E・フランクル[著]、山田邦男[訳] 春秋社)p33

 フランクルは、「幸せになりたい」と願うことを否定しているわけではありません。「幸福を求めること」は、人にそなわる当然の心理であり、とても尊いものです。

「幸せ」を感じるには「幸せなる理由」をつくる

 ただ、フランクルが「幸福そのものを求めないほうがいい」と言うのは、患者の中に、「幸せになりたい」と言いながら、「幸せになる理由」を現実的つくり出す努力からは逃げようとする人が、とても多かったからです。

 そして、努力から逃げる人たちが、実際に、幸せから遠ざかっていたからです。

  • 幸せになりたい。けれど、恋人は面倒なのでいらない
  • 幸せになりたいでも、仕事は嫌なことばかりなので、やりたくない。
  • 幸せになりたい。けど、結婚して子どもをつくると大変なので、家族はいらない。

 そんな風に幸せを求める人がいたら、どう感じますか。矛盾を感じますよね。

 面倒なこと、嫌なことから逃げたい気持ちはわかります。でも、それでは「幸せ」は遠ざかっていきます。

 なぜなら、「幸せになる理由」が生まれないからです。

 幸福そのものを目標として追い求めた結果、幸福が逃げていく。

 これを「幸福のパラドクス」といいます。

 「幸せ」は、「幸せになる理由」を、どれだけつくりだせるかにかかっています。

 「幸せになる理由」をつくり出そうと努力しないことは、「幸せ」になる可能性を自分から少なくしているようなものです。その考えは、宝くじを買おうとせず「3億円、当たれ!」と願うことに似ています。

「幸せになる理由」が生まれる場所

 フランクルが「幸福のパラドクス」を語る時、哲学者キルケゴールの言葉をよく引き合いに出します。

幸せの扉は外に向かって開く。

by 哲学者キルケゴール

 この言葉には、どんな意味があるのでしょう。

 「幸せだな〜」と思ったり、感じたりするのは、頭の中であり、心の中ですね。つまり「幸福感」は、私たちの内側にあります。いや、「ある」のではなくて、何らかの「理由」があってはじめて、その都度、「生まれてくる」のです。

 では、「幸せになる理由」は、どこで生み出されるのでしょう。

 それは、「外界」(外の世界)で発生します。

 心理学では、頭の中や心の中を「内界」(内の世界)とするのに対して、外の現実世界を「外界」(外の世界)とします。

「外界」が「幸せになる理由」の生まれる場所

 私たち人間が、外の世界で具体的に行動を起こし、人に出会ったり、人と一緒に仕事をしたり、結婚したり、子どもをつくったり、人に奉仕したり、何らかの出来事を経験することで、「幸せになる理由」が発生します。

 外の世界に向かい、外の世界で何かを成すことで「幸せ」を感じます。ですので…、

「幸せの扉」は、外開きの扉です。

 哲学者キルケゴールが「幸せの扉は外に向かって開く。」というのは、外の世界での行動・経験の大切をいっているのです。これは心理学者アドラーがいった「共同体感覚」(社会の中で生き、他者と関係を築きながら世の中に貢献しようとする心理)に通じます。

 「幸せ」そのものを追い求めることは、外開きの扉を内開きの扉だと思って、一生懸命、内側に引いているようなものです。それでは「幸せの扉」は開きません。

幸せの本当の意味とは

 幸せになりたいと思っても、現実がそれを邪魔をします。

 現実(外界)は、不条理で私たちを苦しめます。

 戦争はあるし、ブラック企業は存在するし、学校では「いじめ」はあるし、オレオレ詐欺でボロ儲けする犯罪者がいるし…この世界は、数え切れないほどの「不条理」に満ちています。

 現実世界の「マイナス面」(不条理)に焦点を合わせると、生きることが嫌になってしまいます。「生きる意味」なんてあると思えないし、「幸せ」を考えるどころではありません。

 それでも、フランクルは「外に向かって扉を開け」といいます。

 その理由は、「幸せになる理由」が外界にあるからであり、「不条理な現実を生きる」という重荷を背負うことが「幸せ」をつくり出すからです。

 仕事での「達成感」(幸福感)を味わうためには、辛く苦しいこともありますが、やっぱり仕事をしなければなりません。仕事という「辛いこと」「苦しいこと」の中から「幸せ」が生まれてきます。

 「辛さ」「苦しさ」が大きければ大きいほど、それを乗り越えて克服した時の「幸福感」はより大きくなります。

仕事で幸せを感じる男のイメージ写真

 幸せの本当の意味とは、人それぞれであり、「幸せ」の裏側にある「苦しさ」「辛さ」とともに見い出されてくるのです。

  「幸せ」と「苦しさ」「辛さ」は表裏一体。

 これが幸せの本当の意味です。

 フランクルは、『意味による癒し』(春秋社)の中で、こういっています。

『意味による癒し』 (V・E・フランクル 春秋社)の表紙画像
『意味による癒し』(春秋社)
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「人間が本当に必要としているものは緊張のない状態ではなく、彼にふさわしい目標のために努力し苦闘することなのです。彼が必要としているのは、是が非でも緊張を解除するということではなく、彼によって充足されることを待っている可能的意味の呼びかけなのです」」

『意味による癒し』(ヴィクトール・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)p17

 心理学者フランクルは、ナチスの強制収容所を生き延びた人です。収容所でナチスに奪われた原稿の再生作業に取り組んでいます。

 過去の記憶をたどりながら、地獄の収容所をいつか出られることを信じて、紙キレに小さな文字で、書き続けました。その時、死の病である発疹チフスにかかっていました。ですが、フランクルは、原稿の再生作業をするお陰で、発疹チフスに打ち勝つことができたというのです。

 現実世界で、「努力し苦闘すること」から逃げるな!

 フランクルが私たちに伝えたいメッセージですね。

「幸せ」は、「努力し苦闘すること」から逃げようとする時、私たちの手からすべり落ちていきます。幸せの本当の意味は、努力や苦闘の経験から自分の力でつかみとることができるのです。

仕事で喜ぶチームのイメージ写真

 不条理なこの世界を「生きる」という「重荷を背負う」ことで、私たちは「幸せ」になります。

 「幸せなれるか、なれないか」
 「幸せか、幸せじゃないか」

 そんな風に頭(内界)で考えてばかりいるより、今、自分がすべきこと=「使命」(ミッション)を自覚して、この不条理でアホらしいバカらしい世界で苦闘し努力を続ける…。

 そうすることで、「幸せになる理由」が生まれ、その結果、人は「幸せだな〜」と感じる最高の瞬間=「幸福感」を味じわうことができるのです。

 現実をみつめて、努力を怠(おこた)らず、外に向かって「幸せの扉」を開きましょう。

(文:松山 淳


【参考文献】

『宿命を超えて、自己を超えて』(V・E・フランクル[著]、山田邦男[訳] 春秋社)
『意味による癒し』(ヴィクトール・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)


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 世界的ベストセラー『夜と霧』の著者であり、ナチスの強制収容所を生き延びた心理学者フランクル。彼の教えは、今なお人生に苦悩する人を救い続けています。フランクル心理学のエッセンスを「7つの教え」にまとめてお伝えいたします。

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V・E・フランクル
フランクルとは

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl 1905〜1997)ロゴセラピーの創始者。オーストリア出身の精神科医、心理学者。世界三大心理学者(フロイト、ユング、アドラー)につぐ「第4の巨頭」。第2次世界大戦中のナチス強制収容所から生還する。その体験を記した『夜と霧』は世界的ベストラーとなる。「生きる意味」を探求するロゴセラピー(Logotherapy)という独自の心理学を確立し、世界に大きな影響を与えた。享年92歳。著書:『夜と霧』(みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)『意味による癒し』(春秋社)ほか。