無意識の力を信頼する《心理ー精神拮抗作用》-フランクル心理学007-

「心理」と「精神」の違い。

「心理」とは何か

フランクルがいう「心理」は、心理的現象を感じとる場所です。心理的現象とは「心の反応」のことです。

自然の中で癒される女性の写真

例えば、「先生に叱られてムカついた」「ディズニーランド行って、めっちゃ楽しかった」「久しぶりに、自然の中で、癒されたわ〜」など、そういった、ある出来事があった時に自然と起きる「心の反応」が、心理的現象です。

嫌いな虫を見たら逃げたくなります。美しい景色を見たら感動します。現実の出来事を刺激にして心が反応することで、いろんな感情が自然とわいてきます。それを感じるのが「心」ですね。その感じる部分またはその働きを、フランクルは「心理」といっています。

では、この「心理」に対して「精神」とは…。

「精神」とは何か

「精神」とは、「無意識レベルでの主体的な人間らしい心の働き」のことです。フランクルは「精神的無意識」ともいっています。

ここでポイントになる言葉は2つあります。「人間らしい」「主体的」です。まず、「主体的」をフックにして説明を進めていきます。

先ほど、「心理」を説明したところで、「自然と起きる」を太字にしました。「主体的」と「自然と起きる」では、反対の考え方になりますね。

「Aさんが主体的に〜を行う」といえば、Aさんが自分の意志で、決断し選択し〜を行うことです。反対に、「自然と起きる」だと、自分の意志の関わりは少なくなり、受け身の状態となります。それは受動的な心の動きといえます。

「精神」ー「主体的」
「心理」ー「受動的」

この「主体的」と「受動的」が、「精神」と「心理」の大きな違いになります。

でも、ここで疑問がわいてきます。

「だって、精神のある場所が無意識だとしたら、どうして主体的になれるの?だって、決断するとか選択するとかって、意識的に行うことでしょ。無意識にできないじゃん」

ホント、その通りですね。ここが混乱するのです。

では、この混乱をおさめるために、まず、フロイトの深層心理学における無意識との違いについて説明していきましょう。

フロイトの考える「無意識」との違い。

フロイトの「無意識」は、「意識」に衝動的に強く作用するものです。

まっつん
まっつん

衝動的とは、意志や理性に反して心が突き動かされる様子です。「昨日、自由が丘でさ、けっこう高かったんだけど、つい、このワンピース衝動買いしちゃったの」と言ったら、「買うつもりはなかったんだけど、欲求に理性が負けて買い物をしてしまった」という状況ですね。

深層心理学の「無意識」には、人の心を突き動かす衝動的な「欲求」という側面があります。「欲求」は、お腹がすいたり、眠たくなったりで、自然と起きてくるものです。自分の意志や理性ではとめられない時もあります。

「自然と起きる」のですから、これは、フランクルの「心の構造」で考えると「心理」に近いものです。

「衝動買い」したら、後で、お小遣いが足りなくなったり、2、3回、ワンピースを着たら、急に似合わないような感じがして、タンスの肥やしになったりします。これは「人間らしい」行いとは言えませんね。

そこで、フランクルは、フロイトの無意識を「衝動的無意識」と名付けて、自身の理論である「精神」の部分を「精神的無意識」と呼んで、対比させたのです。

◆深層心理学ー「衝動的無意識」(理性に反する働きもする)
◆フランクル心理学ー「精神的無意識」(主体的・理性的に働く)

フランクルは、無意識の中で、主体的で理性的で自律的な「人間らしい」心の働きがあるのだと考えたのです。

フランクルの考える無意識

無意識には、衝動的ではない
人間らしさを志向する
理性的かつ主体的な心の働きがある。

この無意識の考え方が、フランクル心理学のオリジナリティのひとつです。私たちの知らないところ(無意識)で、「心」が人間らしい決断や選択をするのです。フランクルは「決断する無意識」といっています。であれば、私たちのもつ「心」は、頼もしい味方となりますね。

「無意識」が主体的に人間らしい決断をする。

これが、2つの目のポイントとなる「人間らしい」です。「人間らしい」心の働きが、無意識のレベルで行われるので、それを信頼すれば、心の働きが健全化していきます。

例えば、駅のホームに立つと、「心臓が止まるのではないか」という恐れがわき起こるようになり、電車に乗れなくなった人がいたとします。これは、その人の本来の姿ではありませんね。その人らしくない状態です。

この自然とこみあげてくる衝動的な恐怖は、出来事(電車に乗る)に対する心の反応なので、フランクルは「心理」次元の問題ととらえます。もし、その恐怖に飲み込まれてしまったら、電車に乗ることができなくなります。

「心理」次元の問題に対して、「精神」(精神的無意識)は、「人間らしい」決断・選択をします。ですので、自然とわき起こってくる「恐れ」に対抗し「精神」は、「電車に乗る」という決断・選択をするように促すのです。

この「心理」レベルの働きに「精神」が抗(あらが)う作用のを、フランクルはこう言いました。

心理ー精神拮抗作用

この「心理ー精神拮抗作用」があるから、フランクル心理学の心理療法である「逆説志向」と「反省除去」が成立するわけです。

それでは、最後に、フランクルの著書から言葉を引用しながら、まとめに入りたいと思います。