エドワード・L・デシ(Edward L. Deci )

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ソマ・パズルによる内的報酬の心理実験。

デシは、1969年当時人気のあった「ソマ・パズル」を使い、「外的・内的報酬」に関係する心理実験を行いました。「ソマ・パズル」は、デシ自身が実際にやってみて、とても達成感があり、やめられなくなったという代物です。

「パズル」イメージ写真

実験では、ソマ・パズルをとく被験者(学生)を2つのグループにわけました。

  1. パズルをとくと金銭的報酬(1ドル)を受け取れる
  2. バズルをといても金銭的報酬(1ドル)は受け取れない

実験の流れ

STEP.1
パズルに挑戦
学生は30分間パズルに取り組む
STEP.2
監督官退出
実験する側の人(監督官)は、30分経過すると「データ入力作業があるため」といって部屋を出ていきます。
STEP.3
自由時間
監督官がいなくなり、 学生たちは残され、不意に自由時間が訪れる。机の上には『タイム』などの雑誌が置かれている。今やっていたパズルもある。雑誌を読むことも、ぼーっとすることも、パズルをすることもできる。

ポイントは最後の自由時間で学生たちが何をするかです。お金を受け取ることと受け取らないことの差が、どんな行動になってあらわれるのか?

2つのグループで、明らかに差が出ました。

1ドル(外的報酬)を受けとらないグループは、パズルに取り組む時間が多かったの対して、1ドルを受けとったグループは、その時間が少なかったのです。

1ドルを受け取らなかったグループは、パズルに取り組むことの「面白さ」「楽しさ」が「内的報酬」になっていて、「もっとやってみたい」という、つまりモチベーションの高い心理状態を生みだしていたと考えられます。

スマホやTVゲームをやっている人たちなら、わかるでしょう。別にお金が欲しくてやっているわけじゃなく、「ただ単純に面白くて楽しいからやっている」のですよね。

でも、お金(外的報酬)がからんでくると、「ただ単純に面白い楽しい」(内的報酬)というシンプルさが損なわれていくわけです。

この事実からデシは、こう考えました。

お金(1ドル)という外的報酬が、パズルをする「楽しさ」(内的報酬)に悪影響を及ぼし、内発的動機づけを弱めたのだ

これが、冒頭の「報酬を与えると、やる気がなくなるなんて、そんなバカな話しはない」という批判の対象となる理論です。

まっつん
まっつん

小学生の低学年の頃、庭の掃除をしたらお駄賃として毎回50円もらえたとします。それで毎月、1,000円ぐらいなっていて、お菓子を自由に買うことができ、せっせと庭掃除に励んでいました。数年後のある日、「もう高学年になったんだから、今日からお駄賃は無しよ」。親からそれ言われました。「そんなバカな…」。庭掃除をするモチベーションが急低下することは想像つくと思います。これが「外的報酬の悪影響」です。

実験はもちろん1回だけはありません。1回だけだったら「たまたま、そうなっただけだよ」と笑われてしまいます。デシは、心理実験を繰り返しデータを積み上げて、その結果として「外的報酬の悪影響」を指摘したのです。

デシは『人を伸ばす力』(新曜社)でこう書いています。

デシ
デシ

「外から動機づけられるよりも自分で自分を動機づけるほうが、創造性、責任感、健康な行動、変化の持続性といった点で優れていたのである」

『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』(新曜社)

つまり、デシは「外発的動機付け」よりも、自分の内から生まれる「達成感」「充実感」などの「内的報酬」によるモチベーションのほうが、やる気を出すうえで有効だと考えたわけです。

では、次から「内発的動機づけ」を生み出す3つの欲求についてお話していきます。

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