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むなしさへの対処法-フランクル心理学001-

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ロゴセラピー(logotherapy)

『意味による癒し』(V・E・フランクル 春秋社)の表紙画像
『意味による癒し』
(V・E・フランクル 春秋社)
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フランクルが創始した心理学の名前は「ロゴセラピー」(logotherapy)です。

「ロゴ」は、ギリシャ語のロゴス(Logos)で、「意味」(meaning)を意味します。セラピー(Terapy)は「療法」ですので、シンプルに言うと、ロゴセラピーは、「意味療法」あるいは「意味による療法」のことです。

フランクル
フランクル

「ロゴセラピーはむしろ未来に焦点を合わせます。すなわち、ロゴセラピーは、未来において患者によって果たされるべき責任と意味に焦点をあわせるのです。」

『意味による癒し』(ヴィクトール・E・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)p5-6

「むしろ未来に焦点を」で「むしろ」と書くのに理由があります。

フロイトの精神分析では、「過去」に焦点を合わせます。「過去」に何があったかを患者から聞き出し、「過去」にどう感じたかを思い出してもらいます。主に過去を分析するのが当時の精神分析です。でも、フランクルは「未来」だと言っています。

過去から今を考えるのではなく、
未来から今を考える。

これがロゴセラピーの大きな特徴です。では、「未来から今を考えると」とは具体的にどのような考え方でしょうか。

強制収容所で「使命」を発見した人は強かった。

フランクルは20世紀最大の悲劇と言われたナチスの強制収容所を生き延びた心理学者です。その時の体験を記した『夜と霧』(みすず書房)は世界的ベストセラーになっています。

『夜と霧』表紙画像
『夜と霧』(みすず書房)
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強制収容所での日々を冷静に観察し、フランクルは、あることを発見しました。悲惨な状況にありながらも、それに「よく耐えた人」と「耐えられなかった人」の違いです。厳しい逆境に「よく耐えた人」は、こんな特徴を持っていました。

フランクル
フランクル

「ナチスの強制収容所で証明されたことですが(さらに後に日本と朝鮮でもアメリカの精神科医たちによって確認されたことですが)、満たすべき使命が自分を待っていることを知っている人ほど、その状況に容易に耐えることができたのです」

『意味による癒し』(ヴィクトール・E・フランクル[著]、山田邦男 [監訳] 春秋社)p15-16

「使命」とは、未来に向かって責任をもって行われる自分のやるべきこと

「これからまだまだやるべきことがある」「家族のためにすべきことが残されている」。そんな風に自分の「使命」を意識できた人は過酷な環境を「よく耐える」ことができました。「むなしさ」にとらわれることなく、心を強く保つことができたのです。

そこで、フランクルは、強制収容所の囚人たちに問いかけました。

「未来に、あなたを待っている誰かはいないか、
未来のために、今、すべきことは何かないのか?」

この問いに対して、ある囚人は、外国で子どもが待っていることを思い出しました。またある人には、やりかけの仕事が残っていました。未来で待っている「人」や「仕事」、つまり「使命」を意識できると、「意味への意志」が満たされて、辛い状況に耐えることができたのです。

まっつん
まっつん

フランクルは、ナチスに奪われた原稿の書き直し作業を強制収容所で行っています。収容所を生き延びた未来に、その原稿を出版することをフランクルは「使命」だと考えていました。原稿を書くことでフランクルは、死に至る発疹チフスにも打ち克つことができました。そして出版は実現され、「使命」は、無事に果たされたのです。

これが「未来」に焦点を合わせることであり、「未来」から、今自分がすべきこと=「使命」を自覚していくことです。

「今、自分が何をしたいか」
と自分の欲求を中心にして今を問うのではなく、
「未来のために、今、すべきことは何か」
と、未来を中心にして今の「使命」を問うのです。

今と未来からの問いの図

「使命」というと、地球環境問題に取り組むとか、社会的な問題を解決するとか、そんな大きな事を考えがちです。でも、フランクルが言うのは、そうではなくて、もし、今、目の前にすべき仕事があるならば、それを「使命」だと考えるのです。

そうした「使命」に無我夢中になって取り組んでいけば、「生きる意味」を満たすことができ、「むなしさ」を克服することができます。

ここで強調したいのは、どれだけ無我夢中になれるかです。フランクル心理学には、「自己超越」という重要なコンセプトがあります。その小難しい言葉の具体的な行動とは、シンプルに言ってしまえば、「今、自分のすべきことに無我夢中になること」なのです。

「自己超越」についは、また別の記事で掘り下げていきたいと思います。

ちなみに、「まっつん」が執筆したフランクル心理学の物語『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)でも、「自己超越」についてわかりやすく落とし込んでありますので、ぜひ、参考になさってください。

『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)

『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)
著:松山淳 解説:諸富祥彦
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未来で待っている誰かために、未来で待っている何かのために、今できることがあります。その今できることに無我夢中になれば、「むなしさ」はきっと消えていることでしょう。

(文:まっつん)


フランクル
フランクル

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl 1905〜1997)ロゴセラピーの創始者。オーストリア出身の精神科医、心理学者。世界三大心理学者(フロイト、ユング、アドラー)につぐ「第4の巨頭」。第2次世界大戦中のナチス強制収容所から生還する。その体験を記した『夜と霧』は世界的ベストラーとなる。「生きる意味」を探求するロゴセラピーという独自の心理学を確立し、世界に大きな影響を与えた。享年92歳。著書:『夜と霧』(みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)『意味による癒し』(春秋社)ほか。


【フランクル関連記事】ご参考までに!

フランクルの画像 ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl) 参考 フランクルの「生いたち」から、その人生心理カウンセラーまっつん(松山淳) 参考 『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)紹介ページ心理カウンセラーまっつん(松山淳)
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