笑いという心の武器を手にしよう。《笑われる勇気》-フランクル心理学006-

笑いという 心の武器を手にしよう!「笑う勇気」

眠れぬ夜にもユーモアを。

『時代精神の病理学』(V・E・フランクル[著] 宮本忠男[訳]  みすず書房)の表紙画像

『時代精神の病理学』
(V・E・フランクル[著] 宮本忠男[訳]  みすず書房)

「逆説志向」は、夜、眠れない時にも有効だとフランクルは言っています。眠れないことは、とても辛いですね。眠ろうとすれば、するほど眠れなくなります。フランクルは、不眠の心理をこう表現しています。

フランクル
フランクル

眠ろう眠ろうと努力すればかえって眠気はさめる一方ですし、また、これはもがけばもがくほど一層ひどくなるものです。眠れるのをいらいらしながら待ち、その上で自分を不安な面持ちで見守る人は、自分から眠りを追い払っているわけです。

『時代精神の病理学』(V・E・フランクル[著] 宮本忠男[訳]  みすず書房)p77

確かに、そうですね。眠れない経験を一度でもしたことがあれば、納得できるでしょう。眠ろうとする努力が、結果的に、自分にベクトルを向けることになってしまい、「私は眠れない、眠れない」という「過度の自己観察」が発生してしまっているのです。

なるほど、「過度の自己観察」がいけないことはわかりました。では、どうすれば眠れるようになれるのでしょうか。

眠ることをあきらめる。

フランクルは、「眠ることをあきらめてください」といいます。「眠ろう眠ろうと」することで、眠れなくなっているのですから、眠ることをあきらめることで、眠りは近づいてくるというのです。

眠っている男性のイラスト

「眠れない眠れない」とか「どうすれば眠れるんだ」とか、「睡眠」について一切考えるのはやめます。どうせ眠れないのですから、「眠り以外のことを思い切って考えてみようと決心する」というのが、フランクルの教えです。ちょっと表現は古いですが、「こんな風に考えてみたら」というフランクルからのユーモアラスな提案です。

フランクル
フランクル

「今夜はちっとも眠りたくない、ひとつ今夜は体を休ませながら、あれやこれやを考えてみたい。この前の休暇のことや次の休暇のことなどを」。

『時代精神の病理学』(V・E・フランクル[著] 宮本忠男[訳]  みすず書房)p77

こうしたユーモアを含めた「逆説志向」のアドバイスによって、不眠に苦しむ人たちが、実際に眠れるようになったのです。驚くとともに、その効果を認めざるをえません。

もちろん、全ての人に効くとはいえないでしょう。不眠にも、様々な原因やレベルがありますので、病院に通っている方は、主治医の指示に従ってください。

笑い飛ばすことの力。

「逆説志向」の事例を知れば知るほど、「ユーモア」の大切さを理解することができます。それは、「笑いの力」であり、自分を「笑い飛ばす」ぐらいの肩から力を抜けた感じのほうが「心の健康に良い」ということですね。次の事例もそうです。

60年間、とても強い洗浄強迫があり細菌恐怖症で苦しむ婦人がいました。彼女は、フランクルのいるウィーン市立病院に入院する前、「生きることは私にとって地獄でした」と告白しています。
この患者に対してフランクルの同僚が「逆説志向」を試みました。
それから約2ヵ月後に婦人は、普通の生活ができるようになったのです。この婦人が「それを笑い飛ばす」と表現しています。「それ」とは、自分の症状であり、現実に起きてくる不安や恐れのことでした。

60年もの間、苦しんでいたのに、約2ヶ月の逆説志向で、つまり「それを笑い飛ばす」ことによって、恐怖症の苦しみから解放されました。つくづくよかったと思いますし、ユーモアや笑いの底力を実感する事例です。

ユーモアについて、フランクルの言葉です。

フランクル
フランクル

この逆説志向は、何と言いましても、そのつどできるだけユーモラスに表現される必要があります。実際、ユーモアというものは、本質的に人間的な現象なのです。人間はこのユーモアによって、ありとあらゆるものから距離を取り、したがって自分自身からさえも距離を取って、自分をすっかり意のままにすることができるのです。このように距離を取るという人間の本質的能力を発揮させること、それこそわれわれが逆説志向を適用する際にいつも心がけていることなのです。

『時代精神の病理学』(V・E・フランクル[著] 宮本忠男[訳]  みすず書房)p77

ここでフランクルは、「距離を取る」と繰り返しています。笑いによって、心理的な距離がとれることを「自己距離化」といいます。距離が取れると、何らかのセラピー効果の発生するのが人間の心なのですね。

笑顔の女性イメージ画像

フランクルは患者に「逆説志向」を説明し、それを試みようとして笑いが起きれば「もう賭けに勝ったのである」(『神経症1』 みすず書房p161)とまで言っています。

フランクル心理学は、笑いを大事にする心理学なのです。

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