「死にたい」を乗り越える-フランクル心理学005-

フランクル心理学 「死にたい」を乗り越える 発見的楽観主義

「成功と失敗」から「絶望と意味」の軸へ

『〈生きる意味〉を求めて』(V・E・フランクル[著]、諸富祥彦 [監訳] 上嶋洋一 松岡世利子[訳] 春秋社)の表紙画像
『〈生きる意味〉を求めて』
(V・E・フランクル 春秋社)
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これに対してフランクルは、「ホモ・パティエンス」を提唱しました。「パティエンス」とは、「苦悩に耐える」という意味ですので、「ホモ・パティエンス」とは「苦悩する人」ということです。フランクルはこう言っています。

フランクル
フランクル

苦悩する人は、苦しむ術(すべ)を知る人、自分の苦しみからさえも、人間的な偉業を創りあげる手立てを知っている人である。

『〈生きる意味〉を求めて』(V・E・フランクル[著]、諸富祥彦 [監訳] 上嶋洋一 松岡世利子[訳] 春秋社)p59

下の図の通り、ホモ・パティエンスは「成功と失敗」の横軸を移動します。成功すればOKだけど、失敗していたら「自分はダメな存在だ」と否定することになってしまいます。「成功と失敗」の横軸の価値観だけだと、失敗の恐れに駆り立てられて、成功を追い求めて、いつまでもいつまでも走り続けなければなりません。

フランクルに手紙を書いた大学生は、成功しながら絶望しているエリアにポジショニングすることができます。

「成功の法則」に関する本をたくさん買って、「成功の法則」に関するセミナーに次から次へと参加して、でも実りが少なく、「こんなんじゃダメだ、もっと成功しないと」と、自分を否定して、まったく人生に満足できていない場合は、下の図の水平軸(成功と失敗)を行ったり来たりしているだけです。

意味と絶望・失敗と成功のポジショニングマップの図

これに対して、「ホモ・パティエンス」は、「意味と絶望」の縦軸を往復します。人生、山あり谷ありです。どんな人にも絶望を感じるような出来事は起きてきます。「死にたい」と思うことは、決して、珍しいことではありません。

まっつん
まっつん

「死にたい」と思う絶望的状況を否定するのではなく、どんな辛い時にも「生きる意味」はあると考えれば、「絶望」は不幸への片道切符とはならず、充実感をもって生きられる往復切符となるのです。

フランクルは、「苦悩は人間の業績である」とし、次のように言っています。

フランクル
フランクル

ここで一番大切なことは、ユニークな人間の可能性の最高の形を見つめ、その証人になることであり、悲劇をその人にとっての偉大な勝利に変えることであり、苦境を人間的な偉業に変えていくことである。

『〈生きる意味〉を求めて』(V・E・フランクル[著]、諸富祥彦 [監訳] 上嶋洋一 松岡世利子[訳] 春秋社)p54

フランクルはナチスの強制収容所という悲劇に投げ込まれ、苦境のど真ん中にいました。まさに苦境を人間的な偉業に変えた「生き証人」です。

強制収容所では発疹チフスという死の病に冒(おか)されながら、自分の考えた心理学をいつか本にするという使命感を持ち原稿を書き続けました。そのお陰で「死の病」も克服できたといいます。そして、収容所で書いた原稿は、戦争が終わり解放された後、出版されて世界中の人々が読むことになったのです。

フランクルはアメリカに亡命することもできました。でも、家族を見捨てることができず、国に残りました。そのため、収容所に入れられたのです。骨と皮だけになるような飢餓状態になり、監視官に殴られながら土木作業に取り組む日々です。家族は皆、強制収容所で亡くなりました。

この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は KZDachau1945.jpg です
フランクルが解放時に収容されていたダッハウ強制収容所の正面玄関

それは、「成功と失敗」の横軸で考えたら、明らかに「失敗」といえるでしょう。でも、フランクルは、失敗であっても、そこに「生きる意味はあった」というのです。

フランクルは、苦しくて死にたい現実にあっても、その場で「生きる意味」をとらえ直すことで、「死にたい」という状況を乗り越えていきました。

囚人フランクの手紙

先ほどの図に囚人とありましたが、これは、アメリカの州立刑務所にいた囚人ナンバー020640「フランク・E」のことです。罪を犯し刑務所入れられたのですから、その時点では、囚人フランクの人生は失敗であったといえるでしょう。

でも、囚人フランクは、刑務所でフランクル心理学にふれることができたました。仲間と本を読み、講演のテープを聞きました。「どんな人にも、どんな時にも人生には意味がある」。きっと、そのメッセージを受け取ったのでしょう。

意味と絶望・失敗と成功のポジショニングマップの図(再出発の地)

囚人フランクの仲間たちは、フランクルの考え方を知り涙を流しました。そして、フランクは絶望の中から「生きる意味」を見つけ出し、希望を感じることができたのです。彼はフランクルに、こんな手紙を書いています。

「私は、こんな刑務所の中にいるにもかかわらず、私の存在の本当の意味を見つけました。生きる目的を見つけたのです。だから、ここを出た今度こそ、よりよい生き方をするチャンスや、もっといろんなことをするチャンスはすぐそこにきているように思えるのです」

『〈生きる意味〉を求めて』(V・E・フランクル[著]、諸富祥彦 [監訳] 上嶋洋一 松岡世利子[訳] 春秋社)p60

囚人フランクは、横軸の「成功と失敗」から、縦軸の「絶望と意味」の価値観をも手にして、自分のいるポジションを変えることに成功しました。そのエリアは、失敗しながらも「生きる意味」を感じていられる、たくましいメンタリティーをもった人たちが生きる場所です。

その場所は「再出発の地」ともいえ、そこから人は、意味があり成功したといえる地へと旅立っていくことができるのです。

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