「こころのおはなし」はEARTHSHIP CONSULTING「コラム」に移行していきます。

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

フランクルの画像

態度価値。

フランクルはナチスの強制収容所に入っていました。

ナチス親衛隊の監視兵から日常的に暴力を受けていました。収容所では、飢餓や病気によって、人が次から次へと人が死んでいきました。自殺する人も後を絶ちません。「生きる意味」など、微塵も感じられないような地獄の地です。

ダッハウ強制収容所の正面玄関の画像。
フランクルが解放時に収容されていたダッハウ強制収容所の正面玄関

そんな最低最悪の状況にあっても、天使のごとくふるまう模範的な人間がいた、とフランクルは言います。そして、その数は少なくなかった、と…。自分の食事を他人に分け与え、凍える夜に自分のシーツを病人にかけるような「天使のふるまい」何度も目にしたというのです。

フランクルが目撃したことは、それまで学んできた心理学とは違うものでした。「自分の置かれた環境が最悪のものになれば、人間は道徳を失い、最悪の行為を行うことになる」。そう学んだのです。でも、どんなに自分の生きる環境が悪化したとしても、人としての人格の高さ、その美しい態度を崩さない人が、確かにいたのです。

そこで、フランクルは『それでも人生にイエスと言う』(p37)で、こう書いています。

フランクル
フランクル

「私たちはさまざまなやりかたで、人生を意味のあるものにできます。活動することによって、また愛することによって、そして最後に苦悩することによってです。

苦悩することによってというのは、たとえ、さまざまな人生の可能性が制約を受け、行動と愛によって価値を実現することができなくなっても、そうした制約に対してどのような態度をとり、どうふるまうか、そうした制約をうけた苦悩をどう引き受けるか、こうしたすべての点で、価値を実現することがまだできるからです。」

例えば、病を背負い長い間、病院のベッドに伏せる人がいたとします。自分で何かを行う「創造価値」は作りだせず、世界から喜びや感動を受け取る「体験価値」も難しくなってしまった。

でも、その人が病を克服しようと必死に生きようとしているならば、その姿、その態度は、それを見た人々に「生きる勇気」や「人生の意味を考える機会」を与えるでしょう。

つまり、その人が苦悩から逃げず、むしろそれを引き受け、その時とる態度によって人生の意味を満たすことできるのです。

希望を見出せない時でも、「とる態度」によって誰かを感化することができ、そこに意味が生まれる。強制収容所で「天使のふるまい」をした善人たちは、その「とる態度」によって、フランクルに感銘を与えました。その結果、『夜と霧』の文章となり、それは世界に広まり、時を超えて今を生きる世界中の人々に勇気を与えつづけています。

人のとる態度、ふるまいによって、価値が生まれ、意味をなす。

これが態度価値です。


「ホモ・パティエンス」(苦悩する存在)

「ホモ・サピエンス」という言葉を聞いたことがあると思います。「ホモ」は人間であり、「サピエスンス」はラテン語で「賢い」を意味します。他の動物に比べて「賢い」という点に人間の本質がある。そこで、人間の種の学名が「ホモ・サピエンス」となっています。

フランクルは、「ホモ・パティエンス」(苦悩する存在)という概念を提唱しました。人間の本質を「苦悩すること」としたのです。

まっつん
まっつん

人間以外の動物は、「自分の人生に生きる意味があるのか、ないのか」なんて、苦悩することはありませんね。人は、高度な思考力をもったがゆえに、思い悩み、苦しみます。

でも、苦しむだけではありません。その苦しみを通して、人は、人間性を高め成長していくことができます。むしろ、苦悩があるからこそ、人は悩みを克服しようと努力し、よりよい人間になれるのだといえます。

フランクル心理学の3つの価値、「創造価値」「体験価値」「態度価値」は、人に与えられた「苦悩」によって、より輝きをまします。

フランクルが地獄の強制収容所で、むしろ、その人間性を高めたように、私たちも苦難に負けない心を本質的にもっています。

「苦悩」したことは、決して無駄にならず、未来の財産になります。

ですから、どんな時にも人生に「意味」はあります。だから、私たちは、人生から「問われる存在」として、生きる責任を果たしつづけていくのです。

それでは最後に、僭越ながら、「まっつん」こと私がフランクル心理学をベースにして書いた物語『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)から、言葉を引用して終わりにしたいと思います。フランクル心理学のエッセンスをまとめた一文です。

『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)

『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)
著:松山淳 解説:諸富祥彦
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フランクル心理学

意味はこの世界に満ちあふれている。

いついかなる時でも、

どんな状況にあっても生きる意味はある。

生きる意味があるか無いかと問う必要はない。

我々は問われている。

その問いかけにひたすら答えていけばいい。

答えていけば生きる意味は発見され、

生は必ず意味で満たされる。

だから、どんな時でも我が生にイエスと言おう。


(文:まっつん)


【フランクル関連で、他サイトに「まっつん」が書いた記事です】ご参考までに!

参考 フランクルの「生いたち」から、その人生心理カウンセラーまっつん(松山淳) 参考 『君が生きる意味』(ダイヤモンド社)紹介ページ心理カウンセラーまっつん(松山淳)
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