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ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)

フランクルの画像

フランクル
フランクル

ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl 1905〜1997)ロゴセラピーの創始者。オーストリア出身の精神科医、心理学者。世界三大心理学者(フロイト、ユング、アドラー)につぐ「第4の巨頭」。第2次世界大戦中のナチス強制収容所から生還する。その体験を記した『夜と霧』は世界的ベストラーとなる。「生きる意味」を探求するロゴセラピーという独自の心理学を確立し、世界に大きな影響を与えた。享年92歳。著書:『夜と霧』(みすず書房)『それでも人生にイエスと言う』(春秋社)『意味による癒し』(春秋社)ほか。

フランクルはアドラーに破門された。

20世紀最大の悲劇といったら…?

第2次世界対戦中にナチスが行ったユダヤ人の大量虐殺。

そう答える人は、決して少なくありません。

アウシュビッツに代表されるユダヤ人強制収容所をナチスはつくり、虫けらのように人間を殺していきました。そんな地獄の惨劇を生き延びた心理学者が、ここでとりあげるV・E・フランクルです。

その体験を冷静な筆致で記述した『夜と霧』(英題『Man’s Search For Meaning』)は、1946年に出版されると世界的ベストセラーになりました。フランクル心理学を知る上で貴重であることは言うまでもなく、強制収容所で何があったのかを知るノンフィクション作品として、歴史的価値の高い書でもあります。今も世界で読み継がれています。

『夜と霧』(みすず書房)
『夜と霧』(みすず書房)
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フランクルは、オーストリアの首都ウィーンに生まれます。オーストリアと言えば心理学の巨頭フロイトとアドラーの生地ですね。心理学に興味を持った高校生のフランクルは、フロイトと手紙でやり取りしています。

フロイトを学ぶと、次にフランクルは、アドラー心理学に傾倒していきます。そしてアドラーが設立した「個人心理学協会」の主要メンバーとして活躍するようになります。

でも、フランクルはやがてアドラーの考えに疑問を持つようになります。アドラーは、かつてフロイトの意見に異を唱えましたが、今度は、自分が異を唱えられる番になるのです。

フランクルは、自伝に書いています。カフェで会った時、アドラーに無視されたと…。そして最終的にフランクルは、アドラーから破門されてしまうのです。1927年、アドラーがつくった「個人心理学協会」をフランクルは離脱することになります。

歴史は繰り返されました…。

アドラーがフロイトと袂を分かち、独自の心理学(個人心理学)を確立したように、フランクルもアドラーから離れ、「ロゴ・セラピー」という彼オリジナルの心理学を深め、世界へ広めていくことになります。


意味への意志(will to meaning)

フロイトが「快楽への意志」で、アドラーが「優越への意志」ならば、フンラクルは「意味への意志」(will to meaning)という考え方を提唱し、その独自性を打ち出しました。

まっつん
まっつん

「意味への意志」とは、「生きる意味」を求める人間の強いこころの働きです。フランクルは、「生きる意味」を満たすことが「生きる力」になると考えました。「どんな人のどんな人生にも、意味がある」という彼のメッセージは、心理学の範疇を超えて、「人生論」「人生哲学」として、今も悩める人を救い続けています。

仕事でひどい失敗をしたり、家庭や職場での人間関係がうまくいかなくなったり、そんな嫌なことが続くと、「何やってるんだろう」と、人は虚しさを感じます。それが長引き、何をやっても、うまくいかないような状態に落ち込んでしまうと、「こんな人生に意味があるのか」と、あまりの虚しさからつぶやき、自分に問いかけることがあります。

「生きる意味があるか」と自分に問いかけても、「生きる意味」を問いかけるような精神状態では、恐らく、その答えは、悲観的なものになるでしょう。

そこで、フランクルは「生きる意味」に苦しむ人に、こう言います。

フランクル
フランクル

人生に「生きる意味」があるかないかと、問うことはない。人間は、人生の意味を問う存在ではなく、人生からその意味を問われている存在なんだ。だから、人生から差し出された問いに、ひたすら答えていけばいい。そうすれば、「生きる意味」は自ずから満たされていくのだ。

ここにコペルニクス的転回があります。

人が「生きる意味」を「問う」のではなく、
人は「生きる意味」を「問われている」。

フランクルは精神科医として、「生きる意味」に苦しむ人たちと向き合った時、また、講演で多くの人を前にして、この「人が問う」のではなく「人は問わている」という人生に対する見方を180度変える考え方を説きました。その思考法を知っただけで、生きる苦しみが軽くなった人たちが、たくさんいました。

そして、「生きる意味」を満たすための3つのヒントをフランクルは私たちに遺しました。それが次の3つです。

フランクル心理学 3つの価値
  1. 「創造価値」(何かを創り出すことで満たされる価値)
  2. 「体験価値」(何かを体験することで満たされる価値)
  3. 「態度価値」(自身のとる態度によって満たされる価値)

それでは、ここから、フランクル心理学の3つの価値について、順番に説明をしていきます。

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